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2026.4.30お役立ち記事
【後編】信託法より重要な”ヒアリング”とは?家族信託で失敗しないための設計図の作り方

 

前編では、一般の方がご自身で家族信託の手続きを進めようとした際、

「ご自身の家の複雑な事情を、契約というルールに落とし込むこと」が

最大の壁になるお話をしました。

 

親の資産凍結を防ぐ。

そして、親の介護費用を安全に確保する。

 

そのためには、「誰に、どこまで、どうやって財産管理を任せるか」という、

各ご家庭ごとのオリジナルルールが必要です。

 

では専門家は、この複雑で正解のない現実をどのようにして整理し、

機能する信託契約書へと落とし込んでいるのでしょうか?

 

そのカギを握るのが、法律の知識以上に重要な「ヒアリング」という工程です。

 

今回は、家族信託を成功に導くヒアリングの重要性と、

その具体的な進め方について解説します。

 


 

1.ヒアリングで決めるべき「5つの設計要素」

専門家が行うヒアリングは、単なる世間話や状況確認ではありません。

将来揉めそうな争点を先回りして言語化し、契約書の条文に変換するための作業です。

 

最低限、次の5つの要素が「文章として明確に言えるレベル」まで落ちて初めて、家族信託は動き始めます。

 

① 目的(何を守るための信託か)

「親の介護費用を滞りなく支払うため」

「実家を空き家にせず適切に売却するため」

「事業や収益不動産をスムーズに引き継ぐため」

など、信託のゴールを定めます。

 

② 財産の範囲(何を信託財産に入れるか)

日常の生活費の口座、定期預金、実家、賃貸アパートなど、

どの財産を受託者(管理する家族)に託すのかを明確に仕分けます。

 

③ 権限(受託者に何をさせるか)

銀行での引き出しや振り込みだけでなく、

不動産の修繕、賃貸借契約の締結、あるいは売却まで任せるのかなど、

やっていいことの範囲を決めます。

 

④ お金の流れ(収入と支出をどう回すか)

親の年金収入、施設の支払い、固定資産税や医療費など、

お金の動きをシミュレーションし、どこからどう支払うかの動線を整えます。

 

⑤ 監督・透明性(誰にどう報告するか)

他の親族に不信感を持たれないよう、

「年に1回は兄弟全員に収支報告をする」など、

家族間の感情に配慮した透明性の仕組みを作ります。

 


 

2.揉めないためのヒアリングには「正しい順番」がある

ご家族だけで話し合いをすると、

つい「で、誰が財産を管理するの?」「長男でいいよね?」と、

いきなり「人(受託者)」から決めてしまいがちです。

 

しかし、実はこれが親族間のトラブルを生む原因になります。

 

揉めないためのヒアリングには、正しい順番があります。

 

1.まずは「困っていること/避けたい未来」を言語化する(目的の整理)

2.次に「いま何があるか」を把握する(財産の棚卸し)

3.そして「今後どうお金が動くか」を想定する(運用とお金の流れ)

4.最後に「誰がその役割を担うか」を決める(受託者・報告先の決定)

「この家にとって、将来どのような財産管理の機能が必要か」を先に固める。

 

そうすることで、「誰がやるか」という議論が

感情的な好き嫌い、ではなく

役割としての適任者選び、へと変わるのです。

 


 

3.【具体例】「子どもがいないご家庭」でヒアリングが活きる場面

ここで、ヒアリングの力が特に発揮される「お子さんがいないご家庭」のケースを見てみましょう。

お子さんがいないご夫婦やおひとりさまが家族信託を考える場合、

財産管理を託す受託者の候補は、

配偶者、兄弟姉妹、あるいは甥や姪になることが多くなります。

 

このとき、「信頼」と「親族との距離感」が設計に直結するため、

事前のヒアリングが不十分だと次のような問題が起こります。

 

・「甥」に管理を頼んだが、他の親族が反発する

「なぜあの子に全財産を握らせるのか」と、他の兄弟姉妹から疑念を持たれてしまう。

 

・実務の負担ではなく、金銭で判断されやすい

甥や姪になると言うのは、他の兄弟姉妹が遠方に住んでおり、

兄弟姉妹では実務面で対応しきれない場合がほとんどです。

 

「近くにいるから甥にした」という理由で決めてしまうと、

兄弟姉妹から「なんでこんなにかかるんだ」と

後で言われてしまう可能性があります。

 

「どこからどこまでを甥・姪に任せるか(実務の線引き)」を明確にし、親族間で共有しておく。

「甥が一人で抱え込まないよう、親族への定期的な報告ルールを契約書に組み込む」といった対策を打つというのも良いかと思います。

 

「財産を託すから、あとはよろしく」ではなく、

託された側が安全に、かつ無理なく管理を続けられる仕組みを作る。

 

これも、現実をしっかり聞き取っているからこそできる設計です。

 


 

後編まとめ:設計図づくりは、ご家族の想いを形にする第一歩

家族信託が難しいのは、法律の条文が難しいからだけではありません。

 

「親の介護」「お金の動き」「親族の感情」という複雑な現実を、

揉めない形で機能する一つのルールに落とし込むことが難しいのです。

 

その中心にあるのがヒアリングです。

 

ここがしっかりと固まれば、難解に見えた信託法や契約書の条文も、

すべて「ご家族の未来を守るために必要な部品」として

スッと理解できるようになります。

 

「何から手をつければいいか分からない」

「自分の家の場合はどうなるのだろう?」

 

もしそう迷われたら、まずはひな形を探す前に、

現状の不安やご家族の状況を専門家に話してみてください。

 

丁寧にヒアリングを重ねることで、

必ずあなたのご家庭に最適な「安心の設計図」が

見えてくるはずです。

 

 

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