
この記事は、前回の記事(子どもがいないご夫婦必見!家族信託で「老後の不安」と「死後の財産」をどう解決するか)で解説した、お子さんがいらっしゃらないご夫婦の家族信託の有効性について、動画で紹介された具体的な成功事例を基に、その具体的な手順と成功のポイントを詳述します。
この事例は、「誰に頼るか」という不安を抱えていたご夫婦が、信頼できる親族である「姪」を受託者として指名し、将来の安心を勝ち取った物語です。
目次
1.相談のきっかけ:ご主人様の切実な不安
2.ヒアリングから見えた受託者候補:疎遠な親族と良好な親族
3.トントン拍子で進んだ話し合い:「腹を割って話す」大切さ
4.感謝の気持ちを形にする「遺言代用信託」の活用
5.まとめ:成功の秘訣は「諦めずに相談」と「信頼関係」
1. 相談のきっかけ:ご主人様の切実な不安
東京都町田市にお住まいの70代後半のご夫婦は、お二人ともご健在でしたが、特にご主人様が「自分に何かあった時に、妻を一人にしてしまうのではないか」という切実な不安を抱えていました。
お子さんがいないご夫婦にとって、自分たちの介護が必要になった時に「誰に頼めばいいのか」という心理的な負担は非常に大きいものです。
さらに、ご主人の名義である自宅などの資産を、将来、奥様一人が残されたときにどのように管理・処分するかという問題も、ご夫婦にとって大きな課題でした。
2. ヒアリングから見えた受託者候補:疎遠な親族と良好な親族
ご相談の中で、まず重要になったのが「受託者(財産を預け、運用してもらう人)」を誰にするかというヒアリングです。
このご夫婦の場合、奥様側の親族とは疎遠で、連絡を取れる人がいない状態でした。一方で、ご主人様にはご姉妹(お姉様)がいらっしゃり、その娘である姪御様とは良好な関係が築けていました。
家族信託は、血縁の近さよりも「信頼関係」が最も重要です。
当協会からの提案により、「頼めるのであれば、日頃から心配してくれている姪御様が良いかもしれません」ということになり、姪御様を受託者候補として話を進めることになりました。
3. トントン拍子で進んだ話し合い:「腹を割って話す」大切さ
受託者候補が姪御様に決まった後、ご夫婦と姪御様、お姉様が集まり、家族信託の仕組みの説明と、ご主人の切実な思いを伝える場が設けられました。
ご主人様から姪御様へ、「自分にはこういう心配事がある。この町田の自宅(資産)を使って、できたら夫婦で介護施設の費用に充ててもらいたい。空き家になったら処分してもらって、介護費用に役立ててほしい。これが一番の希望だ」という胸の内が、正直に伝えられました。
この時、姪御様は「そのつもりでいましたよ」と、ご夫婦のことを以前から心配し、サポートする意思があったことを表明。
良好な関係性が事前に築かれていたため、話はトントン拍子に進み、姪御様が正式に受託者となってご夫婦の資産を預かり、運用していくことが決まりました。
4. 感謝の気持ちを形にする「遺言代用信託」の活用
この事例のもう一つの重要なポイントは、「誰に財産を遺すか」という問題解決です。
姪御様が介護の手続きや資金準備など、多大なサポートを行うことが決まったため、ご夫婦は、「動いてくれた姪御さんに残したい」という感謝の気持ちを形にすることを望まれました。
そこで活用されたのが、遺言代用信託の仕組みです。
信託契約の中に、ご夫婦が亡くなった後の残余財産の「帰属先(最終的に財産を継ぐ人)」として姪御様を指定しました。
これは公正証書による遺言代用信託として作成され、姪御様を実質的な相続人として指定する形となりました。
これにより、ご夫婦は、老後の不安解消だけでなく、「感謝の気持ち」を財産という形で明確に残すことができ、渡す側も渡される側もスムーズな話し合いと円満な承継を実現することができたのです。
5. まとめ:成功の秘訣は「諦めずに相談」と「信頼関係」
この実例は、お子さんがいらっしゃらなくても、信頼できる親族(甥・姪など)がいれば、家族信託は非常に有効に機能することを証明しています。
「どうせ無理だ」と諦めずに、まずはご自身の親族関係を整理し、当協会に相談することが、将来の安心を勝ち取るための第一歩となります。
この記事は、当協会の解説動画シリーズ「お子さんがいない家庭の家族信託事例|頼れる人がいなくても安心できる仕組み」を元に、家族信託の仕組みついて、初心者にもわかりやすく解説しています。
記事では内容を4つに分けておりますので、すべての内容を確認したい方は下記動画を参照ください。





