超高齢社会の今、身寄りがない「おひとり様」にとって、もしもの時に備えておくことは非常に重要な課題です。
特に、自分が病気や認知症になったとき、あるいは亡くなった後の手続きについて、「誰が」「どこまで対応できるのか」は大きな不安材料になります。
今回は、任意後見制度が、そんなおひとり様にとって「死後も含めた実務対応が可能な仕組み」としてどれほど有効かをお伝えします。
任意後見制度は法律上「死亡で終了」…でも現実はそれだけでは終わらない
法律では、任意後見人の権限は本人の死亡とともに終了すると定められています。
しかし実際には、本人が亡くなった後に行うべき死後事務(火葬、役所への届出、遺品整理など)がすぐに発生します。
こうした手続きを、任意後見人がそのまま対応するケースが多いのが現実です。
わざわざ「死後事務委任契約」まで結ぶ方は少数派ですが、任意後見契約によって生前から信頼関係が築かれていれば、死後の事務も自然な流れで任せられる場合があります。
おひとり様にとって、任意後見制度は「生前と死後」の安心をつなぐ手段
当協会では、「家族信託契約」を提案するケースも多くあります。
家族信託が活用できる方は、すでに信頼できる家族や親しい人がいることが前提です。
そのため、任意後見制度を併用する必要はそれほど高くありません。
しかし、おひとり様にとっては状況が違います。
・入院中の身元保証人がいない
・認知症になったときに頼れる人がいない
・死後の葬儀や事務をお願いできる人がいない
こうした悩みに対して、任意後見制度は実務的に大きな支えになります。
生前の生活支援や財産管理だけでなく、亡くなったあとの事務的な部分まで自然に引き受けてもらえる可能性があるため、安心材料として非常に価値があります。
実際にあった「おひとり様が行方不明になったとき」の話
実体験として、親しい知人が行方不明になったことがありました。
その方はおひとり様で、支援認定を受けていたため、社会福祉法人に連絡したのですが――
「個人情報のため、詳しいことはお伝えできません」
と言われてしまいました。
ところが、任意後見契約があれば別です。
「任意後見人の方であれば、詳細をお伝えできます」
と説明されました。
つまり、どれだけ親しくても、制度上の「赤の他人」には情報が開示されないのが現実です。
「誰に何を託せるか」で備えは変わる
おひとり様であっても、「信頼して任せられる人」がいるならば、任意後見制度を前向きに検討する価値があります。
さらに、「財産も託してよい」と考えている場合には、家族信託という選択肢も有効です。
ポイントは、「自分が判断できなくなったとき」「亡くなった後」に何が起きるかを具体的に想像し、それに対応できる制度を早めに整えておくことです。
まとめ:おひとり様だからこそ、任意後見制度は“自分の人生の後半”を守る制度になる
任意後見制度は、単に法的な手続きの一部ではありません。
人生の最終章を安心して迎えるための備えであり、特に身寄りのない方にとっては心強い支えになります。
死後まで含めた安心を考えるなら、ぜひ一度「任意後見制度」を検討してみてください。